平成三年、バブル経済が崩壊した。高騰を続けていた株価、地価が暴落し、多くの破産者と失業者を生み出し、日本中が暗い影におおわれた。本来のものの価値などには関係なく、次の誰かが買ってくれるのを前提として繰り返された株、土地の高値売買。とどまるところを知らずに膨張していった巨大な泡。誰もが心の中では「こんな理屈に合わないことが長く続くわけがない」「いつかきっと弾ける」と思っていた。しかし、そんなことに頓着するよりも泡に乗っかって上昇していったほうが楽だった。
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だから誰もが泡に乗り、泡の恩恵を受けようとしていた。そして、懸念されていたとおり、ついに泡は破裂した。弾き飛ばされた多くの人々はバブルに酔い、バブルに溺れていた。直前まで事態好転を信じ、ギリギリまで粘った者ほど手ひどい目にあっている。O氏もそんな一人だ。「生きるためにはどんなことだってやるさ」。こううそぶくO氏だが、そのおかれた状況を思い浮かべれば、どんなことをやってもドン底からはい上がるのは難しい。背負っている借金の重さにツブされないように、日々を送るだけでもけっして楽ではない。自律神経失調症になったことすらある。それでも目覚めは、毎日いやおうなく訪れる。明けない夜はない、そう信じる以外にどんな道があるというのだろう。どんなに深く眠ろうとも、彼が送ってきた人生は変わることもないし、背負っているものが消えることもないのだ。それでも奇蹟を夢み、明るい朝を信じたい――。